「正しい歩き方」とは書き出したものの、正しい歩き方などあるのでしょうか。
人が生れると「這(はえ)ば立て、立てば歩(あゆ)めの親心」ではありませんが、人は自然に歩き出すのです。
そして今日までずっと歩き続けてきたのです、ですから皆さんはすでに「歩き」のベテランであり、エキスパートなのです。
従って「歩き方」は十人十色であり、千差万別なのです、その様なベテランの皆様に「あなたの歩き方は間違っている」とは言う気もありませんし、言えるものでもありません。
しかしそれではこの章は終わってしまいますので、みなさまに呪縛をかけている「かかと着地」について解説してみたいと思います。
呪縛と多少大袈裟に言ってしまいましたが、ウォーキングを語る時、この「かかと着地」と大きな腕の振りが強調されます、あたかも競歩の選手が理想のように言います。
しかし「競歩」はウォーキングの究極でもなければ極限でもないのです、これは「競歩」という限られた距離を時間で争う競技なのです、ですからこれからフィードバックされては堪りません。
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@後足で蹴り出しAのようにカカトで着地するとブレーキがかかり、衝撃が膝に加わり
結果B膝が前方にブレてしまう |
そこで金科玉条の如く語られる「かかと着地」について解説してみましょう、これからはあくまで私見ですのであしからず。
「かかと着地」から受けるイメージは、あたかもつま先で蹴り出し、かかとで着地し、これを連続するかの如く語ります。
しかし一々かかとで着地すればその都度ブレーキがかかり進めたものではありません。
そしてこの「かかと着地」を押し通せば、体は自然と前傾姿勢になり膝えの負担が大きく、結果膝にダメージを受けてしまいます。
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@ 振り戻し |
それでは私なりの「歩き方」を説明しましょう。
つま先を立てて前方に振り出した足は最上点で一瞬停止します。
つまり膝を伸ばして進行方向に足を振り出した状態です。
一瞬停止した後、戻っている状態で足裏後部(つま先が立っている状態)が接地(着地では有りません)します。
このとき肝心なのが、振り出した足が後方に力強く戻ろうとしている状態で接地させます。
この戻しが推進力になり、必然的に膝は真っ直ぐになります。
この歩き方のバロメーターは簡単です、シューズのかかとの減りがつま先側より大きいことで判断できます。
このかかとの減りは決して足を引きずって磨り減ったものではありません、振り戻しウォークの勲章なのです。
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A 踏み込み |
B 擦り足 |
接地しましたら、次に立てているつま先をペタッと踏み下ろします。
この踏み下ろす勢いで加速がつき、次の一歩を踏み出します。
後方への振り戻しの推進力は幾分残っている状態です。
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C 抜き足 |
決してつま先では蹴りません、私の自己流に「蹴り出し」と言う言葉はありません。
つま先の蹴りは筋肉にも負担をかけ、長距離ですと疲労度に差が出ます。
つま先で蹴り出せば必然的に前傾姿勢になってしまいます。
この「前傾姿勢」は一見スピードが出そうな気がしますが、一歩毎にブレーキがかかり膝に負担をかけてしまいます。
足の振り戻しにすれば必然的に背筋は伸びます、また背筋を伸ばせば当然、足の「振り戻しウォーク」になります、試してみて下さい。
しかし余り複雑に考えないで下さい、イメージの問題です。
「振り戻しウォーク」を自動車にたとえると「前輪駆動車」になります、前に振り出された足の戻る反力で進みます。
これに引替え「蹴り出しウォーク」は「後輪駆動車」になります。
自動車はさて置き、ウォーキングでは「前輪駆動」が良さそうです。
上り坂、下り坂の何れも歩幅をせばめることが絶対条件です。
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下り坂はかかと着地 |
下り坂でよく足や膝を痛めるのは登りの辛さから開放され、大股で一気に下ったときに生じます。
坂の下りは歩幅を狭くします、特に下りでは重要です、体重が膝にかかるからです。
一度試しに歩幅を広くし、つま先だけで下ってみてください、膝が前に出てしまい、その負担が十分に理解できると思います。
下り坂は「かかと着地」ウォークです。
「ウォーキングの呪縛」で云いましたように、かかと着地は一歩毎にブレーキがかかります。
逆に下りではこのブレーキを利用するのです、さもないと加速がついてしまいます。
従ってシューズに十分なクッション性がなければ膝に負担をかけてしまいます。(「正しいシューズ選び」参照)
上り坂は「振り戻しウォーク」です、但し、歩幅は狭めます。
踏み込みの強さで登りましょう。
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つま先登り |
べた足登り |
東海道の箱根東坂の胸突き八丁の階段等の上り下りは全て足の裏全体(べた足)が基本です
これはすぐに実感できます。
お近くの階段で試してみて下さい、「つま先」だけで上り下りをし。
次に「べた足」で上り下りをしてみてください、一目瞭然でしょう、疲労感と膝の負担の違いに気が付くはずです。
腕の振りについて考えてみましょう、基本的に腕は前後一直線に振ります。
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腕を左右に振る歩く欽チャン歩き |
これはバランスを取り、歩きに勢いをつける為です。
ですから肘を45°に曲げ、前後に力強くふる必要はありません、自分に合った脚の運びにリズムを与えるイメージで十分です。
問題は特に女性に見受けられる「欽ちゃん歩き」です。
つまり腕を体の前で左右に振ってしまう歩き方です、とやかく言えませんが、これは止めましょう。
試しに左右の振りをオーバーにして歩いてみて下さい、膝が捻られるのが分かると思います。
良かれと続けたことが「アダ」になる可能性が十分にあります。
ウォーキングは理想的な有酸素運動といわれています。
平坦な街道ウォークでしたらことさら呼吸を意識する必要は無いと思います。
しかし一旦、上り坂になり、呼吸がせわしなくなりましたら、ハーハーと短い呼吸は返って新鮮な空気を肺に送り込めません。
本来肺から排出されるべき空気が肺と口、鼻を継ぐ気道の中を上下しているに過ぎません。
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2回に分けて使用済の酸素を
シッカリ排気します、次に新鮮
な酸素を肺一杯に吸気します |
呼吸が浅いと十分な排気、吸
気が行われず酸素による燃焼
エネルギーが得られません |
ですから本来は深呼吸が必要なのです。
肺の中の空気を全部吐き出し、次に新鮮な空気を肺一杯に吸い込みます。
しかし実際にウォーク中この深呼吸をしながらではリズムがとれません。
そこで2回に分けて息を吐き、次に又、2回に分けて吸気をします。
このイメージは口をすぼめ「フーフー」と息を吐き、口を横に広げ「ヒーヒー」と吸気をします。
「フーフー、ヒーヒー、フーフー、ヒーヒー、フーフー、ヒーヒー」と歩調に合わせて繰り返します。
肺の中が空気で満たされていたのでは新鮮な空気が入り込む余地が有りません。
呼吸はマズ、排気ありきです。
しかしこの「ヒーヒー、フーフー」あまり大きな声でやりますと、勘違いされます、あしからず。
全編を通してこと有るごとに「膝の負担」や「膝のダメージ」に付いて触れますのは、良かれと思って始めたことが「アダ」になっては無念だからです。
「膝」は人類が二足歩行を始めた時からの弱点のひとつと言われています。
左右の膝は膝から上の全体重を支えています、そして一旦歩きだせば一歩毎に一方の膝に全体重がかかります。
それに加え「G」がかかるのです。
その様な膝に前後、左右のズレやネジレ及び衝撃を加えては堪りません。
一旦ダメージを受けてしまえばウォーキングはおろか日常生活にも支障をきたしてしまいます。
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大腿骨と脛骨は半月状に接し、
接触面は軟骨により保護されて
います。
大腿骨と脛骨は金属の蝶番の
様にピンやボルトで堅固に固定
されている訳ではなく、4本の靭
帯で柔軟に固定されています。
そして各筋肉が周りを固めて
いるのです。
従って過度なネジレやズレ及
び衝撃を加えますと靭帯の炎症
や軟骨の接触不良のダメージを
受けてしまいます。
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かなり強引な物言いになりますが「歩きで痛めた膝は歩きで直せ」と私、思っています。
膝は大腿骨(もも)とすねの脛骨が軟骨を会して接しているだけです。
それをシッカリと支えているのは筋肉です。
この筋肉を鍛えない限り老化する一方です、但しユックリとリハビリウォークに徹しましょう。
そしてバランスのとれた食事により筋肉に養分を与えます。
あえて「正しい歩き方」を意味付ければ、長い距離を歩き通せる「歩き方」です。
そして「膝」を痛めない歩き方が「真の正しい歩き方」とも言えます。
ご自身にとってどの様に歩くのがベターなのかを研究してみて下さい。
無論、シューズやウェアーを含めてトータルに考えましょう、そして掛け声は「ヒーヒー、フーフー」ですよ。
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