尾道カヤック製作記
 
尾道と向島を結ぶ尾道大橋

 平成15年11月6日〜12日の7日間、広島県尾道市に有ります財団法人尾道海洋学院 日本海洋技術専門学院 マリンテクノでカヤック製作のお手伝いをして参りました。
 
本校は
マリンスペシャリストの養成を目的に、日本国中のマリーナをはじめボート・ヨットメーカー関連企業や海洋スポーツ施設などマリン業界に稀有の人材を送り出しています。

今春、本校の
校長先生首席常務理事が遠路ご来訪下され、マリン分野における知識、技術の学習に加え、実艇の製作教育を取り入れたいとのご趣旨でした。
漁港の小型漁船の多くに特異なバルバスバウが後付けされています
 全く異論なく、二つ返事で了承させて頂きました。

尾道は坂の町並みであり、又、歴史的にも古く、多くの古寺古刹が残されています。

本校の
実習場は尾道の対岸、瀬戸内に浮かぶ向島(むかいしま)にあります。

実習場のある向島へは
尾道大橋で渡ります、ちなみに向島は因島(いんのしま)、大島等を経由して四国に至る瀬戸内しまなみ海道の本州側第一の島です。

カヤック製作の実習期間は7日間、11名の実習生を3班に分けて3艇、教師陣自らが1艇、計4艇の製作です。

それでは取り掛かりましょう!

[1日目]
【パネルのカット】 
3mm厚合板からサイド及びボトムパネルの切り出し作業から開始です。

【パネルのスカーフカット】
切り出した4艇分全てのパネルを1:8の間隔で階段状に並べて、ベルトサンダーで一気に仕上げます。

作業の全ては生徒自からが実践します、心配には及ばず見事に電動工具を操っています。
【スカーフジョイント】

スカーフを切ったパネルを4艇分に分けます。

各班でレイアウトを確認し、スカーフ部を接着します。

こんなペラペラの合板で本当に人が乗れるカヤックが出来るのか不思議がっていました。

[2日目]
【原図&カッティング】

パネルのスカーフが硬化したら、パネル上に原図を描き、重ねて切出します。

同時にシアー材のスカーフと接着を行います。

ボトムパネルの曲線は電動ジグソーで切り出します、電動工具の扱いがうまい生徒が自ら買って出て作業を行いました。

見事にカットされました。

[3日目]
【ボトムの組立】

ボトムパネルのキール部分を銅線でステッチしてます。

二日目までの作業のほとんどは全員による共同作業でしたが、いよいよ各班単位の作業に入ります。

段々作業の進め方に各班の個性が発揮されてきました。
【ハルの組立】

銅線によるサイドパネルとボトムパネルのステッチを行っています。

頼りなくペラペラであった個々のパネルが組み上がるに従いリジッド(堅固)なハルになることが実感できます。
【フィレット】

ハルが組み上がると、キールラインとチャイン部にマイクロバルーンとエポキシ樹脂によるパテでフィレットを切ります。

このフィレット切りは2名参加の女性徒が一番上手でした。

しかし授業後、女性徒の一人が交通事故に遭い入院しました。

一日も早い快癒をお祈りします。
【ガラステープの施行】

フィレット切り作業が終了したら、フィレット上にガラステープをエポキシ樹脂で貼り付けます。

流石に教師陣の作業は速いです。

[4日目]
【コーミングの製作】

5.5mm厚合板面にコーミングの原図を描き、4枚を重ねて電動ジグソーで一気に切出します。

この辺りから各班の中にも役割分担が芽生え、作業効率が飛躍的に向上してきました。
【パーツの位置出し】

デッキビームと前後バルクヘッドの位置を出します。

バルクヘッドを現場に合わせて、切り出します。

左が校長先生です、大変面倒見の良い先生で生徒達に慕われていました。

全日参観され教師艇を製作しました。

[5日目]
【デッキビームとテンプレート】

デッキビームとテンプレートの原図を描き切り出します。

テンプレートを定規にしてシアー材を削ります。

デッキビームの作製は効率アップを図る為、クランプによる積層を止め、5.5mm厚合板3枚のビーム材にエポキシ接着剤を施工しビスで固定し、即切り出しました。
【シアーの調整】

バルクヘッドやビームを接着する前にシアーにデッキカーブのベベルを切ります。

シアー材のベベル出しはカンナと木工ヤスリの併用で仕上げます。

ある生徒は切り出したデッキビームにサンドペーパーを巻き付けて最終調整を行っていました。

グッドアイデアです、脱帽!
【パーツ類の接着】

デッキビームと前後バルクヘッドをハルに接着します。

寄書きされたアフトバルクヘッド。

4艇並ぶと流石に壮観です。

[6日目]
【最終調整】

シアー材を固定していたステープルの除去を行い、各部を最終的に擦り合わせます。

シアー材の固定には梱包用テープの上からステープル止めにしました、ステープルの除去に威力発揮です。

ビルダーお奨めのテクニックです。

教師陣も真剣です。
【ハル内部のコーティング】

ハル内部をエポキシ樹脂コーティングします。

特に気室になる前後バルクヘッド内は十分に塗り込みます。
【デッキパネルを張る】

デッキパネルは張る前に裏面をエポキシ樹脂をコーティングします。

力を加えデッキカーブを維持しながら各先端まで張ります。

協力体制十分です、テンポ良く作業が進行しています。
【コーミングホールを開ける】

デッキが張り上がったらコックピットを切り開けます。

それこそ見事にデッキが完成されました。

これによりカヤックは「鬼」の様な強度を発揮します。

[7日目(最終日)]
【ステッチの除去】

ボトムをステッチした銅線を除去します。

銅線のカット片は床に落とさず、牛乳パックの中に収納しています。

生徒達は毎日作業後必ず床の清掃を行いました。
【シアー・チャインの切り出し】

ハミ出しているデッキパネル及びボトムパネルをカッティングします。

カヤックの優美なラインが現れます。

それにしても手ノコの扱いが見事です。
【ハルの完成】

設計の意図通りに仕上がったハル。

それにしても良くぞ頑張りました、お見事です。

優美な中にも瞬発力を秘めたダイナミックなカヤックが出来上がりました。

お見事です!
【作業場の景】

日ごとに作業効率は高まり、各自の役割をモクモクとこなすようになりました。

正に一丸となってのカヤック製作でした。

後は整形、グラシィング、塗装、艤装、進水です。

決して無理をしないでカヤック製作を楽しんで下さい。
【お別れ】

「今時の若者は」とよく耳にします。

しかしこれはなにも今に始まったことではなく神代、太古の時代から言われ続け、繰り返されてきた事ではないでしょうか。

今回カヤックの製作を通して先生方と生徒達の触れ合いを体験させていただき私自身大変勉強になりました。

達成感とたしかな手応えを感じ尾道を後にしました。

帰路の新幹線の車中で一人祝杯です!

楽しかった!!