市販のカヤックはそれなりに高額です、価格、材質、重量を比較してみると面白い結果が得られます、それはカヤックの重量が軽くなればなるほど高額になるということです。 標準的なシーカヤックタイプで比較して見ましょう、最も安価と言えるのがポリ(ポリエチレン)製のカヤックです、ハル(船体)重量はおおよそ25kg以上はあり、価格は20万円前後です。
最も 軽いカーボン製カヤックのハル重量は15kg前後です、しかし価格は一気に50万円はオーバーしてしまいます。 それでは自作の木製カヤックの重量は何とカーボン艇と同同じ15kg前後なのです。
木(ウッド)には長所もあれば短所もあります。 ウッドの長所は何と言っても比重が軽いということです、どのくらい軽いかといえば水に浮く位軽いのです、そして加工がし易い点が最大の長所といえます。 この問題を見事に解決したのが合板(プライウッド)です、割れやすい薄い板(ベニヤ板)の向きを交互に張り合わせることによって安定した強度をつくりだし、工業的材料としてこんにち広く復及しています。 さあ問題はこの合板(プライウッド)の選択です、それこそ世界中のボートビルダー達はハンで押したようにマリンプライウッド(船舶用合板)の使用を薦めています、場合によってはマリン用合板以外の合板で船を造ることは犯罪とすら言い切っています。 そりゃ確かに船を作るのですから、マリンプライウッドに越したことはありません。
心配ご無用です、一般の材木屋さんで市販されている耐水合板(タイプT)で十分です、日本サイズは3×6(サブロク)と呼ばれ、90cm×1.8mで運搬や扱いが楽です、価格は3mm厚合板で1枚当たり700円前後です。 マリン用合板に使用されているベニヤ板は何も特別に水や海水に強い木ではありません、極普通のべニア板と思って何ら差し支えありません。 そこで合板を購入する時は晴天の日の昼に行きましょう、材木屋さんに行きましたら、カヤックを合板で作る事情を説明し、選別の許しを得ましょう。
輸入マリンプライウッドは3層の厚みが均一になっています。
国産の合板の構成は表裏のべニア板は薄く、中間層のべニア板は厚めになっています。
サアいよいよ核心部分に入りましょう、安価な国産建築用合板で必要にして十分な理由をもう一つ掲げておきましょう。 合板を含めウッドの欠点は腐朽です、これを回避するには木部に対して水分と酸素の供給を遮断してしまえばいいのです、これを機能的に解決する方法がウエストシステム工法です。 自作の木製カヤックはエポキシ樹脂を多用して製作します。
断片のみによる要領を得ないもどかしさから、それこそ一念発起し、ウッド&エポキシ工法のバイブルと言われる「The Gougeon Brothers on Boat Construction Wood & WEST SYSTEM Materials」を辞書片手に3年を掛けて全て訳しました。 その結果解ったことはウエストシステム工法とはウッドとエポキシのコンポジット(複合)構造だったのです。 このテクニックを駆使するためにエポキシ樹脂を核にして接着剤、パテ材、コーティング材等用途ごとに使い分け、合板は完全にエポキシでシールされます、これにより水分、酸素は完全に遮断され、各部材はより強靭になります。 ガラスクロスを芯材とするFRPの場合、ガラスクロス単体では何の機能もしませんが、安価な建築用合板を使用して製作されたカヤックはそれ自体立派な構造材です、それに尚且つエポキシ樹脂を加えるのですから必要にして十分な強度が得られます、お解かり頂けたでしょうか。
なにか難しそうな方法に思えるでしょうが、船を作る工法としては最も簡単な方法の一つです、要約すれば単に合板同士を針金で縫い合わせ、接着するだけです。 切り出したパネル同士を銅の針金で縫うように仮止めし、エポキシ樹脂で固定するだけです。
そしてカヤックを自ら作る楽しみは格別です! お父さんやお爺ちゃんが子供や孫の為に目の前でカヤックを作ろうものなら、子供の目は驚きと尊敬の眼差しに変わるでしょう。 やらない手はありませんね。
|